息を回す

管楽器を吹くときに息は当然口から楽器の中へ流れて行きます。このとき単純にそれだけをイメージしたのでは必ずしもうまく行くとは限りません。第2話で書いたようにタンギング地点より後ろに母音、響きを置くことが出来なくなるからです。そこで「息を回す」というイメージを使うのです。もともと声楽界ではよく聞く言葉なのですが、管楽器界ではあまり聞き慣れない言葉なので戸惑う人も多いのではないでしょうか。では実際どのようにイメージしたら良いかを考えてみましょう。体の中にある空気を直線的に楽器の中へ出ていくとは考えずに、いったんお腹の底、横隔膜の方へ下がって、さらに後ろへ向かって体の背面を上って首の付け根の骨を通って口の中から楽器の中へと流れていくとイメージします。つまり一度下へ向かった息が後ろを回って出るということです。図参照
ではなぜ息を回す必要があるのでしょうか。これは第2話とも関係していますが、ひと言で言ってしまえば喉を前後に開きたいからなのです。別の言い方をすればタンギング地点より母音、響きの位置を後ろに置きたいからです。息が体の前面から直接出て行くとイメージしてしまうと喉が開きにくくなってしまいます。息を回してやることにより、喉が開きアンブシュアにメリットを与えてくれます。
息を回すことを覚えるのに、音階練習やヴォカリーズなどを始めはスラーでそれから同じフレーズにタンギングをつけてみると良いでしょう。
曲の中でいきなり高い音が出てきた時など、後ろを回して音を当てなければ音が外れたりリードミスをしたり、そうならないまでも硬くて響きがなかったり、詰まった音になってしまいます。