曲の中でどうしても息が続かないフレーズや、長く延ばさなければならない音が最後まで続かないときなど、吸う息の量が少ないからと、息の量のせいだと思っている人は結構多いのではないでしょうか。そういう時はそれらのフレーズの前に出来る限りたくさん息を吸おうとして、力んでいる人が多いように思います。たくさん吸おうとイメージするとどうしても上半身に力みが生まれ横隔膜が下まで下がらずに結局浅いブレスになってしまいます。また仮に横隔膜が下がったとしても上半身がパンパンになるまで息を吸ってしまっては、結局無駄に出てしまうか、息をフレーズに応じて吐くことが出来なくなり、爆発状態になってしまうでしょう。確かに横隔膜が下がってくれた時にはたくさん息を吸えたような感じがするのは良く分かります。しかしそれは横隔膜が下がった結果に得られる感覚でありはじめから沢山吸おうと思うのではなく、深く吸うとイメージするほうが力まずに横隔膜が下がってくれると思います。
ここまでの話しは吸気のことだけですが、吸気が上手く出来れば息は長持ちするのでしょうか。そうです問題は息を吐いているときが重要なのです。確かに横隔膜が下がることは大変重要なことですが、せっかく下がった横隔膜も直ぐに元の位置に戻ってしまっては何にもなりません。アンブシュアが開いていたり、声門(声帯と声帯の隙間)が開きすぎていたりすれば息はたちまち体から出ていってしまい横隔膜は元の位置に戻ってしまいます。もう少し広く言えば地声モードの喉のバランスやアンブシュアの時は横隔膜は元の位置に戻ってしまうのです。そうなるとうまく吸気が出来たとしても長いフレーズは吹けません。ベルカントモードの喉の位置、アンブシュアで息を吐けば横隔膜は息を吐いているにもかかわらず下がろうとします。この現象を対応運動と呼んでいます。長い息を吐く為にはこの対応運動が起こっていることが不可欠なのです。