第8話で少し触れましたがあまり聞きなれない言葉だと思いますのでもう少し詳しく書いてみようと思います。
息を吸った時には横隔膜が下がりますが、そのまま吐けば横隔膜は元の位置へ戻ってしまいます。このことを純粋呼気といいます。これを確認するためにはみぞおちの辺りを触りながら吸ったり吐いたりしてみるとよく分かります。吸ったときに脹らんで吐く時にすぐにへこみますね。しかしこの状態では短い音は出ても長い音や、まして音の上下や強弱など音楽のフレーズはとても吹けたものではありません。
そこで母音の位置を声楽発声時の位置にイメージして息を吐いてみると脹らんだみぞおちが少しの間へこまずに留まっていたり、あるいはさらに脹らんできたりします。このように喉が開いた状態で息を吐いてみると、吸う時に働いた筋肉が元に戻るのではなく、さらに吸う時と同じ働きをするのです。この働きを対応運動といいます。この働きは音型や強弱、音域などによって程度の違いがあります。強烈な時はみぞおちが突き出るようなこともあれば、そのまま留まっているような時もあります。つまり音楽が決めてくれるわけです。
しかしうまく対応運動が起きたことで様々な誤解が生まれることがあります。例えば吹くときにみぞおちがへこんではいけないからとみぞおちを突き出したり、脇腹を広げて固定させたりすることです。対応運動は開いた喉息を回したときに自然に起こる現象ですから、故意にそのような外見をつくろうとすると弊害が出て来ます。見た目の結果が同じでも体の筋肉バランスは全く違うのです。
また対応運動が起こった時には肩や上半身の力が抜けて息に重さを感じられるようになります。したがって肩や上半身力に力が入った生徒の力を抜くためには対応運動を起こさせてやる必要があるのです。ただ呪文のように「力を抜きなさい」と言っても抜けてはくれないのです。